濁った僕を抱きしめて
遠くにいる拓海くんと目が合った。
拓海くんは小さく頷く。



ーーこれが合図だ。


否応なしにそう思ったわたしは、銃を片手に駆け出した。
敵の背後に回り、銃の引き金を引いた。


反動で銃の重さが増す。
両手でそれを抑えると、拓海くんの手からも弾丸が放たれた。


男は動かなくなり、その場に倒れた。


「……終わり、ですか」
「だね。ありがと、璃恋」


それを用意しておいた袋に入れ、近くにあったトラックの荷台に積んだ。


「毎回思うんですけど、これってどこに行くんですか?」
「俺もわかんない。取り敢えず入れろって言われてるから入れてる」


拓海くんがわたしの方を向き、手を差し出す。
わたしはその手を取って、握った。


「よし、帰るか」


十二月の夜は寒い。
その寒さは暗すぎて、わたしひとりで過ごすには耐えられなかっただろう。


でも、今は違う。


隣で、わたしの手を握ってくれる人がいる。
< 76 / 241 >

この作品をシェア

pagetop