濁った僕を抱きしめて
どうしてこんなに、生きづらいんだろう。


「萩乃さんはもっと、肩の力を抜いてもいいと思います」


クラスの担任との教育相談で言われた言葉だった。
わたしだって好きで考えすぎているわけじゃない。
肩の力を抜けるもんなら抜きたい。
抜いていいなら抜きたい。


なのに、わたしには肩の力を抜ける場所が無かった。


家では親の機嫌を取るのに必死だったし、学校では誰かに嫌われないよう立ち回るのに必死だった。
そうやって生きていたら、いつしか自分が何なのか分からなくなった。


ただ誰かのために生きる。
そんな自分が虚しくて、悲しくて。
でも、そうすることでしか生きられないようなー


ーー拓海くん。


呟いた言葉は、届くかどうかも分からないほどに小さい声だった。


「……どうした?」


握った手に力がこもる。
離れないで。ずっとそばにいて。


そうやって約束した者の関係が崩れていくのを、わたしは何度も見てきた。
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