濁った僕を抱きしめて
だから、そばにいてとは言わない。
一緒にいるよ、なんて言わなくていい。
約束はいらない。


ーーただ、この手を離さないでください。


「……なんでもないです。早く帰りましょ」


拓海くんは一瞬だけ困惑したような表情を見せた。
それもすぐに笑顔に切り替わる。


苦しげな表情をしていたわたしに気を遣ってのことだろう。


「……そうだ、ちょっと遊んでいく?」
「遊ぶ?」


拓海くんはわたしの手を引いて走って行く。
どこに向かっているのか分からない。


不思議と不安では無かった。
拓海くんとならどこだっていい。


「よし、着いた」


向かった先はアパートの近くの公園だった。
その公園には小さい高台のような場所があって、足下には数センチの雪が積もっていた。


「こんなとこあったんですね、知らなかったです」
「俺も最近知った。意外といい眺めだよね」
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