濁った僕を抱きしめて
そうは言われたものの、周りは暗すぎて景色どころでは無い。


何が見えるんだろう。
そう思って身を乗り出す。


あ、あそこにアパートがある。
見た目が汚らしい上にぽつんとあるもんだからすぐに見つけられた。


視力が悪いから遠くの物がよく見えない。
目を細めて見ようとするけれど、それでも何がどこにあるか分からない。


あれいつも行ってるスーパーかな。
あんな駐車場広かったっけ。
いつも歩いて行っているから分からないのか。


あれ、あんなところにコンビニあったんだ。
もう少し早く気づければよかった。


そうして遠くを眺めていたら、右側から雪玉が飛んできた。


視線を右にずらす。
にやにやと笑う拓海くんが視界に入る。


「痛いじゃないですか、仕返しします」
「やってやるよ」


足下の雪をかき集めて丸くする。


雪合戦なんていつぶりだろう。
ちゃんとやったことはないかもしれない。
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