濁った僕を抱きしめて
「早く帰りましょ、わたし寒くなってきました」


照れを隠すように早口で言った。
寒いとは言ったけれど、このふわふわとした空気が漂う場から抜け出すための口実でしかない。


「寒い?ごめん、早く帰ればよかったね」


拓海くんが着ていたコートのポケットから何かを取り出す。


「手袋あった、つける?」


わたしの手に押し付けられるようにして手渡された。
わたしはそれをつけることはせず、拓海くんの手を取った。


「こっちの方がいいです」


拓海くんは一瞬驚いた後、笑いながら手に力を込めた。
わたしも繋いだ手に力を込める。


「そう言えば今何時なんだろ」
「確認しますね」


携帯を取り出して時間を確認した。
液晶画面に文字が浮かび上がって、もう日付が変わっていることを告げた。


「もう十二時回ったみたいです」
「え、そんな?意外と早いね」
「何ですか意外とって」
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