濁った僕を抱きしめて
俺は笑いながら机に置いた銃を手に取る。
スプレーを吹きかけ、ティッシュで汚れを拭き取る。


少しだけティッシュが赤黒く染まった。


スプレーの強い匂いが鼻を刺激する。
つんとした匂いにむせた。


もう何年も使っているけれど、なぜかこの匂いにだけ慣れることが出来ない。


鉄くさい血の匂いにも、引き金を引いた後の火薬特有の匂いにももう慣れたのに。


「璃恋、銃貸して。手入れするから」
「ちょっと待ってもらってもいいですか。洗濯物だけ終わらせちゃうので」
「分かった。なんか欲しい道具ある?ナイフとか」
「わたしナイフはいいです。自分で刺す感覚無理なんですよね、多分」
「そっか」


ナイフを持ってキッチンに立つ。
先にお湯を沸かしておく。
それから手を切らないよう注意しながら洗う。


流れていく水が血と同じ色をしている。
何度も何度も洗っているのに毎回この色の水が流れる。
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