濁った僕を抱きしめて
「……何買ってきたんですか」
「さぁ、なんでしょうか」
「面倒臭い女みたいなこと言わないでください」


彼はつれないなぁと口を尖らせ、レジ袋から中身を取り出す。


フルーツサンドに菓子パン、それからカップ麺。
タバコにライター。


「……タバコ、吸うんですか?」
「え?あぁまぁ、たまにね。君がいるなら控えなきゃだけど」


用がなくなったレジ袋をわしゃわしゃと潰し、ぽいとゴミ箱に捨てる。


わたしに向き直ると、思い出したように言った。


「そう言えば、名前聞いてなかった。君、名前は?」


少し、悩む。


相手は見知らぬ人だ。
何をされるかわからない。


こうやって優しいふりをして、わたしを貶めようとしているだけなのではないか。


そこまで考えて、だんだん笑えてきた。
彼の手を取ったのは、紛れもなく自分だ。


わたしが、わたしの手で、わたしの人生を歪めたのだ。
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