凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「まったく、可愛い顔に何してくれる」
「……えっ?」
カルロスからぽつりと発せられたひと言に、思わずルーリアは目を丸くする。
(可愛い顔っておっしゃった)
ルーリアが顔を真っ赤にさせると、そこでカルロスも今さっきの自分の発言を思い出し、完全に動きを止めた。そして、おずおずとルーリアから手を離し困惑げに視線を彷徨わせた後、くるりと背を向ける。「着替えてくる」と冷ややかな低い声音で言い残し、自室に向かって歩き出した。
「あらやだ。坊ちゃんが照れてるの、初めて見ましたよ」
そばに寄ってきたエリンからこっそり囁きかけられ、ルーリアは困惑気味に言葉を返す。
「照れていましたか? 私には不快そうなお声に聞こえましたが」
「ルーリア奥様と同じように、顔を赤くさせていましたよ」
奥様と再び呼ばれてしまったことよりも、彼が頬を赤らめていたという事実に動揺してしまい、ルーリアは耳まで熱くなっていく。
恥ずかしさと共に嬉しさが心を占めていき、心が熱くなる。そこにぽつりと芽生えた愛しいという感情に、ルーリアは気づかないふりをした。