凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
(より強い魔力で相手の力を押さえ込むことで、結界として機能させていたのは想像つくが、ここに込められているのは一体誰の魔力だ。名家として幅をきかせている癖にこの程度でしかないというのなら呆れる)
何か一つの魔力に特化している一族の力には強い圧を感じることが多い。この魔法石の中に残っている魔力は決して弱くはないが、圧倒されるものでもない。
(この相手なら、光の魔力で何らかの勝負をしても負ける気がしない。そうなると現状、ルーリアが一番能力が高いことになるな)
カルロスはあれこれ考えながらも、用済みだとばかりにそれをテーブルの上に置いて、ポケットから魔法石を掴み取った。
魔法石をぎゅっと握りしめて目を閉じる。やがてカルロスの体から発せられた光の粒子が魔法石の中へと吸い込まれていった。
ぼんやりと輝いた魔法石を持ってカルロスはルーリアの元へ戻る。彼女の枕元に置こうとした瞬間、魔法石が一気に熱を持ち、小さな亀裂を生じさせた。
自分の魔力がルーリアによって打ち破られそうになっているのを目にし、カルロスはわずかに驚き、そしてニヤリと笑う。
「……面白い。受けて立つ」
そう宣言し、カルロスは魔法石を掴み直した。
+ + +
窓の向こうから鳥の囀る声が聞こえ、ルーリアは目覚めた。体を起こしてすっかり明るくなっている空へと視線を移動させ、少しばかり唖然とした表情を浮かべた。
「もう朝なのね」
いつもみたいに悪夢を見ていたような記憶は朧げにあるのに、今の今まで目が覚めることなく眠り続けていたことにルーリアはただただ驚く。
すると、自分の枕元にきらきらと輝く魔法石があることに気づき、見覚えのないそれを慌てて手に取る。