凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「綺麗」
傾ければ輝きの濃さが変化し、魔法石を自身の魔力で磨き上げて結晶化したとも言えるような代物だ。熟睡できた理由を早々に理解し、ルーリアは魔法石を大事に抱え持って、部屋を飛び出した。
もちろん向かう先はカルロスのもとである。彼の部屋をノックしてみたが応答はなく、声をかけてみようかと迷っていると、居間の方でエリンの笑い声が響いたため、自然とルーリアの足はそちらに向かう。
様子を窺うように室内を覗き込めば、トレーを小脇に抱えているエリンと、窓際のひとり掛けの大きな椅子に座り、本を手にしたカルロスの姿を見つける。
「……おはようございます」
声をかけてからルーリアはふたりに歩み寄っていく。するとすぐにエリンから「奥様、おはようございます!」と明るく笑顔を返され、カルロスからも「おはよう」といつも通りのあっさりとした挨拶を返された。
「カルロス様、ありがとうございます!」
感謝の言葉に「え?」と疑問で返してきたカルロスへと、ルーリアはもう一歩近づく。
「これって、カルロス様ですよね? 久しぶりにぐっすり眠れました」
ルーリアが手のひらに乗せた魔法石を、差し出すようにして見せれば、ようやくカルロスは腑に落ちたような顔となる。
「眠れたのか、良かったな」
「カルロス坊ちゃんが魔法石をそのように輝かせているのですか? さすがですね」
「カルロス様は本当にすごいお人ですよね」