凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
後ろからルーリアの手元を覗き込んだエリンが驚きの声をあげ、ルーリアは同意するように力強く頷く。
ふたりから褒め称えられたカルロスは、嫌がるように肩を竦めた。
「やめろ……それはちょっとムキになって張り合った結果でしかない。俺をすごいというなら、ルーリアこそだ」
そして、手にしていた本をぱたりと閉じると、椅子の横の小さなサイドテーブルにそれを置き、代わりに淹れたてらしい湯気の立ち上るティーカップを手に取り、口へと運ぶ。
ひと口飲んだ後、思い出したかのようにカルロスの目がルーリアに向けられる。
「そうだ。朝食が済んだら三人で買い物に出るぞ」
思わずルーリアはこの場にいる人数を数え、おずおずと確認する。
「……それは、私もということでしょうか」
「ああ。そのつもりで準備を頼む」
町に買い物に出るのは初めての経験で、自分の魔力が暴走したらどうしようとやはり不安を覚える。そんな中でも、カルロスと一緒ならば大丈夫かもしれないと一度考えれば、前向きな気持ちとなり楽しみにすら思えてきた。
ルーリアは魔法石を胸元で抱き締めながら、少しだけ緊張気味に「はい」と返事をした。
カルロスが騎士団員となってから、エリンたちと共に食事をしていなかったらしいのだが、カルロスの提案でレイモンドを含めた四人で毎朝の朝食をとることになった。
レイモンドが騎士団の馬や王城で飼われている犬や猫など多くの動物たちの健康管理を任されているため、今朝はその話題が多く飛び交い、ルーリアはふむふむと話に耳を傾けた。
食事の後は、再びカルロスの妹カレンの衣装部屋へとルーリアはエリンと共に足を踏み入れる。そして、「デートですもの。腕がなりますね」と楽しそうなエリンの手によって、ルーリアはあっという間に着飾られていった。