凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「出来の良くない物を作りすぎましたよね。ごめんなさい」
「でっ、出来が良くないなんて本気でおっしゃって……いる顔ですね。とんでもないです。普段医局から購入しているものと比べ物にならないくらい上級品ですよ」
レイモンドは咄嗟に笑ったが、しゅんとしているルーリアに笑顔を強張らせた。カルロスはルーリアの両肩を軽く掴んで、真剣な面持ちで向かい合うと、力強く話しかけた。
「ルーリアは自分に自信を持って良い。俺もルーリアの夫であることを誇らしく思う」
褒められた上に、身に余る言葉までもらい、ルーリアは何も言えずに、ただカルロスを見つめ返した。
セレットは調合台から身軽に飛び降りると、ルーリアへと体を向ける。
「その通りだ。儂たち精霊の体は人間のとは違い、魔力の塊の様なものだ。だから、精霊は人間の作った魔法薬を使うことはない。なぜなら魔力の高い者が生成した魔法薬でないとあまり効き目がないからだ。それがこれほどまでに回復してしまうとは驚きだ」
調合台から飛び降りても痛みが再発していない様子から、セレットがしっかり回復できていることは一目瞭然だ。
「それだけじゃない。今、儂は闇の魔力を受け、体の奥深いところにある魔力の核までも乗っ取られそうになっていた。ここまできてしまえば、普通はもう手の施しようがなく、諦めるしかないというのに、お嬢ちゃんの力で闇はすべて払われた。ルーリアさんと言ったな、ありがとう」