凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
五章、過去と繋がる
セレットが精霊たちの生活する場所へ行ってしまってから、もうすぐ一ヶ月が経とうとしている。
(欲しい情報に辿り着けない)
カルロスはため息を吐きながら国立図書館を出て、そこからほど近い場所にある騎士団の詰め所に向かって歩き出す。
時間を見つけてはこうして精霊に関する本を漁っているのだか、精霊や精霊からの祝福に関して詳細に書かれている書物をなかなか見つけられない。
(今のところ、精霊であるセレットが一番情報を持っていそうだな……聞いたところで教えてもらえるか分からないが)
まだ幼かった頃、セレットに「精霊」に関して質問したことがあるのだが、語りたくないといった反応をされ、断念したことがある。
とはいえ、ルーリアに関して引っかかった様な素振りを見せた後、セレットは消えたため、彼女に関わる情報を持って帰ってくるのは間違いないだろう。
(帰ってくるのを待つしかないな)
歯痒さを覚えながら歩道を進んでいると、後ろにわずかだが知っている気配を感じ、カルロスはぴたりと足を止め、気だるげに踵を返す。
「何か用ですか?」
すぐ後ろにはカルロスに絡もうと手を伸ばしているエリオットがいて、失敗したことに苦笑いを浮かべる。
「気配を消していたのに、なぜバレたんだ」
「完全に消せていなかったからです」
カルロスから冷めた眼差しを返されても、エリオットは気にすることなく、そのままがしっとカルロスの肩に腕を回した。