凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「この前預かった魔法石から魔力紋を分析してみたが……闇の魔力は該当したぞ。かつてジークローヴ家を襲った者たちの魔力紋と」
「……なんだって」
こそっと告げられた言葉にカルロスは大きく目を見開き、怒りを表情に滲ませる。
「やはり、闇の魔力ではどこの一族の紋か判別できませんでしたよね」
かつて亡骸に残された魔力を分析してもらったが、どの一族とも該当なしだった。
今回もそうだろうと期待はせずに確認の言葉を投げかけると、やはりエリオットは首肯する。しかし、カルロスは心に生まれた希望を消さずに、別の質問を投げかけた。
「では、もうひとつ残されていた水の魔力の方は?」
「……それが、どことも一致しなかった」
犯罪などの抑止力として、魔力を扱う一族は必ず魔力紋を登録することとなっている。闇の魔法を扱う時は故意に魔力紋を変えている場合が多く、そこから使用者を炙り出すことは厳しい。そして、魔力紋を変えて魔力を発動させるのは、手間がかかり多くの魔力も必要となるため、それなりに力がある者でなければ難しい。
そのため、水などの一般的に使用される魔力からなら、どの一族かを特定できるかと考えたのだが、期待は砕け散った。
「相手が慎重なのか、そもそも一族が偽りの魔力紋で登録しているか」