凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 それ以上、ルーリアは続けらない。「婚姻を解消しますか?」という問いかけも「そばにいさせてください」というお願いも、声が喉に詰まってしまい言葉にすることが出来なかった。
 カルロスは繋いでいる手だけでなく、もう片方の手も繋ぎ合わせて、ただ真っ直ぐルーリアだけを瞳に映す。

「すまないルーリア……約束は守れない。俺はこの手を離したくない……このまま俺の妻でいてくれないか?」

 贈られた言葉だけでなく、カルロスが渡してきた物を目にし、ルーリアは目に涙を浮かべた。

「お母さまのネックレスを見つけ出して下さったのですね」
「ケントにも手伝ってもらったけどな」
「ありがとうございます」

 ルーリアは声を震わせて感謝を伝えた後、改めてカルロスを見つめた。

「私も、温かくて大きなカルロス様の手を離したくありません」

 ポロポロと目から涙がこぼれ落ちるのもそのままに、ルーリアはカルロスに笑いかけた。

「カルロス様を心からお慕いしております。いつまでもあなたの妻でいさせてください」

 手を離して、涙で濡れたルーリアの頬を、カルロスは指先で拭ってから、焦がれる気持ちを込めるように優しく囁きかけけた。

「好きだよ、ルーリア」

 少しの躊躇いを見せた後、カルロスはゆっくりとルーリアに顔を近づけていく。触れた唇はとろけるように熱く、もう留めておけないお互いの気持ちを伝え合うように、繰り返し重ね合う。
 柔らかな心地よさと甘美な熱、高鳴る鼓動までもが溶け合って、ひとつとなる。そんな感覚を抱いた時、すぐ近くの茂みがガサガサと大きく揺れた。

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