凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「きゃーーーっ! 見てみて、エメラルド!」

 そこから顔を出したのはヴァイオレットとエメラルドとステイクの三体で、ヴァイオレットは目を輝かせ夢見心地な顔で、他二体は気まずさいっぱいの表情で、ルーリアとカルロスを見ていた。
 エメラルドはあれから二週間後に、ルーリアたちの元に姿を現した。救ってくれたお礼と、回復の報告を受け、ルーリアは「元気になってよかった」とそっと小さな体を抱き締めた。
 そしてエメラルドが回復すれば、ヴァイオレットの虚弱体質も一気に改善され、お転婆振りまで復活する。頻繁にルーリアの前に姿を見せるようになり、今はこうやってステイクとエメラルドも巻き込んで、街に出て遊びまわるまでなった。

「これは、セレットにも報告しなくちゃね!」

 声高に宣言すると、ヴァイオレットは茂みを飛び出し、屋敷に向かって飛んでいく。すぐさま「やめろ!」と声を上げたカルロスへと残された二体は苦笑いを浮かべつつ、ヴァイオレットを追いかけるようにして飛び立った。
 カルロスは気恥ずかしそうに頭を抑え、ルーリアは顔を真っ赤にさせてしばし固まっていたが、顔を見合わせれば自然と笑顔となる。

「帰ろう」
「はい!」


 しっかりと手を繋ぎ直してから、ふたりは共に歩き出す。
 まるでふたりを祝福するかのように、日差しが差し込み照らす小道は、照れた顔を見合わせながら結婚指輪をふたりそろって指に通すこととなる明日へ、多くの人々に祝われる中、結婚式が執り行われる半年後へ、そして、幸せに満ち溢れた未来へと限りなく続いていく。


<END>


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