凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
おまけ 「心から探し求めた(カルロス視点)」
それは王妃の四十七回目の誕生日パーティーでのこと。
黒色の騎士団服を身に纏ったカルロスは、部下のケントと共に会場となっている大広間の壁際に並び立ち、室内や招待客たちの様子へと目を光らせていた。
豪華な食事が並び、華やかな貴族服にドレス、煌びやかな宝飾類で着飾った人々が多くひしめき合っている。
騎士団員として、カルロスはこれまで何度も城内に足を踏み入れている。もちろんこの大広間も同様で、賑やかな光景など些細な変化でしかないくらい見慣れた景色だ。
(特に問題なし)
招待した貴族たちとにこやかに談笑する王妃の様子もしっかり確認してから、出入り口へと視線を移動させる途中で、女性と目が合った。
すぐに視線は外したが、視界の隅でその女性が自分に向かって近づいてくるのを感じ取り、カルロスは嫌な予感を覚え、同時に心の中でうんざりとため息をつく。
女性はカルロスの目の前で足を止め、「お久しぶりです」と笑いかけてきた。顔と名前を思い出せず眉根を寄せたカルロスに向かって、「アカデミーで同じクラスだった」と女性が続けて自分の名前を名乗った。
顔は全く思い出せなくても名前に聞き覚えがあったため、そこでようやくカルロスが「ああ」と反応すると、女性は嬉しそうににこりと笑った。