「狼」被りは素直になれない
プロローグ
*浅野雛 視点*
「わーっ、負けた〜」
「おい水橋、浅野さんに挨拶してこいよー。罰ゲームなんだから守れ」
「ヘいへーい」
……。
またあいつらか。今日も今日とて懲りないね。
誰にも聞かれないように、はぁ、と小さくため息をつく。
ゲームに負けたら私に話しかけるという罰ゲームが、最近のクラスメイト男子の流行りみたいだ。
別にめちゃくちゃ嫌ってわけじゃないし、罰ゲームに使われることに不快感を感じてもいない。
ただ、追い払うのがめんどくさいってだけ。
トタトタと迫ってくる男子の足音を聞きながら、気づかないふりしてぼーっと頬杖をついてそっぽを向く。
「こ、こんにちは〜」
「何、私に何か用?」
「その、好きな食べ物とかってありますか?」
「なんで教える必要があるわけ?そもそも学ランの前開けてるけどそれで廊下でたら怒られるけど。身だしなみ管理きちんとしてから出直してきなさい」
「はははは、相変わらず辛辣だな〜」
「惨敗だね〜。さすが孤高の一匹狼」
話しかけてきた男子を睨みつけて追い払うと、その様子を遠巻きに見ていた男子達が面白そうな顔で笑っている声が聞こえた。
これもいつものことだけど。
私はこんな性格だからか、男子に遊ばれるし、女子は近寄ってこない。
いつもヒソヒソ話しているのは知っている。
他の女子とかと群れるのが大嫌いで、いつも一人。
馴れ馴れしく近寄ろうものなら辛辣な態度で冷たい言葉を放つ。
周りからはそう見えているらしい。なんか失礼な気もするけど、まあ事実だからしょうがない。
そんな私は周りから「孤高の一匹狼」と呼ばれている。
授業でグループをつくられたり、ペアを設定されたらそれは真面目にやるけど、基本的に友情関係はなし。
小学校からの親友はいるけど、学校が違うから半年に一度くらい、下手をすれば一年に一回会えるかどうかだ。
友達がいなくても案外日常生活には困らないと感じるのは私がこんな性格だからだろうか。
「浅野さん」
「何、白井」
「また罰ゲームのターゲットにされたの?」
「そうらしいけど。で、あんたは何の用なのよ」
「いや、ただちょっとお話ししたかっただけ」
「そう。……ねえ白井」
「うん?」
「あんた……いや、なんでもないわ」
「そう?じゃあ、また」
白井が過ぎ去っていくのを目で追って、今言いかけて飲み込んだことを心の中で問う。
白井、あんた、どうしていつも、私のことを怖がらないでただ素直に話しかけてくるの?
そう問いたかった。
私には基本誰も近寄らない。
話しかけてきたとしても、ビクビクしているのがお見通し。
貼り付けた笑顔の下に恐怖があるのを見抜いてしまう。
なのに、白井は、白井裕也というやつは、私に恐怖を感じることもなく、ただ素直に話しかけてきている。
それも、何度も。
不思議なやつ。
「わーっ、負けた〜」
「おい水橋、浅野さんに挨拶してこいよー。罰ゲームなんだから守れ」
「ヘいへーい」
……。
またあいつらか。今日も今日とて懲りないね。
誰にも聞かれないように、はぁ、と小さくため息をつく。
ゲームに負けたら私に話しかけるという罰ゲームが、最近のクラスメイト男子の流行りみたいだ。
別にめちゃくちゃ嫌ってわけじゃないし、罰ゲームに使われることに不快感を感じてもいない。
ただ、追い払うのがめんどくさいってだけ。
トタトタと迫ってくる男子の足音を聞きながら、気づかないふりしてぼーっと頬杖をついてそっぽを向く。
「こ、こんにちは〜」
「何、私に何か用?」
「その、好きな食べ物とかってありますか?」
「なんで教える必要があるわけ?そもそも学ランの前開けてるけどそれで廊下でたら怒られるけど。身だしなみ管理きちんとしてから出直してきなさい」
「はははは、相変わらず辛辣だな〜」
「惨敗だね〜。さすが孤高の一匹狼」
話しかけてきた男子を睨みつけて追い払うと、その様子を遠巻きに見ていた男子達が面白そうな顔で笑っている声が聞こえた。
これもいつものことだけど。
私はこんな性格だからか、男子に遊ばれるし、女子は近寄ってこない。
いつもヒソヒソ話しているのは知っている。
他の女子とかと群れるのが大嫌いで、いつも一人。
馴れ馴れしく近寄ろうものなら辛辣な態度で冷たい言葉を放つ。
周りからはそう見えているらしい。なんか失礼な気もするけど、まあ事実だからしょうがない。
そんな私は周りから「孤高の一匹狼」と呼ばれている。
授業でグループをつくられたり、ペアを設定されたらそれは真面目にやるけど、基本的に友情関係はなし。
小学校からの親友はいるけど、学校が違うから半年に一度くらい、下手をすれば一年に一回会えるかどうかだ。
友達がいなくても案外日常生活には困らないと感じるのは私がこんな性格だからだろうか。
「浅野さん」
「何、白井」
「また罰ゲームのターゲットにされたの?」
「そうらしいけど。で、あんたは何の用なのよ」
「いや、ただちょっとお話ししたかっただけ」
「そう。……ねえ白井」
「うん?」
「あんた……いや、なんでもないわ」
「そう?じゃあ、また」
白井が過ぎ去っていくのを目で追って、今言いかけて飲み込んだことを心の中で問う。
白井、あんた、どうしていつも、私のことを怖がらないでただ素直に話しかけてくるの?
そう問いたかった。
私には基本誰も近寄らない。
話しかけてきたとしても、ビクビクしているのがお見通し。
貼り付けた笑顔の下に恐怖があるのを見抜いてしまう。
なのに、白井は、白井裕也というやつは、私に恐怖を感じることもなく、ただ素直に話しかけてきている。
それも、何度も。
不思議なやつ。