どちらとの恋を選びますか?【後編】~元彼御曹司のとろ甘愛に溶かされて
 背中をさする優しい手は、しばらくして肩を持って、体を離した。
 「じゃあ、俺、帰るよ」
 「えっ…せっかくだから、部屋に…」
 「彼の事を思って、涙を流す咲羅を、俺は嫉妬で優しく出来ない」
 「そんな気持ちじゃ…」
 「自然に流れた涙は、そういう意味なんだ。咲羅の心の奥底にある、彼への思いだ。それが例え愛で無くても」
 「陽…」
 「金曜日に迎えに来るよ。俺の家から、会社に行けるように、荷物を纏めておいて」
 「えっ…」
 「一緒に暮らそう、咲羅。その時まで、気持ちの整理をしろ」

 優しく微笑みながら私の頭を撫でると、陽は外に出て、助手席のドアを開けた。

 「いいな、咲羅。次、俺以外の男のことで、その涙を見た時は…」

 私を見つめていた陽は、耳元まで顔を近づけ、
 「啼き疲れようと、容赦しないぞ」
 そうささやくと、「もう遅いから」と私の手を引いた。

 私は仕方なく車を降りると、陽は「帰ったら連絡する」と言いながら、車に乗ってドアを閉めると、帰って行った。
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