どちらとの恋を選びますか?【後編】~元彼御曹司のとろ甘愛に溶かされて
 その言葉を聞いて、陽の眉がピクッと上がった。
 「そうですか…」
 「時々、母みたいで、ちょっと嫌な時もありますけど」
 その言葉を聞いて、陽が「えっ?」と吹き出した。

 「お母さんですか?」
 陽が訪ねると、
 「あっ、余計なこと言うと怒られますが…はいっ、僕の母とよく似てて」
 天然系の田中君は、悪気無さそうに、陽の質問に答えていた。

 「田中君、もう答えなくていいから」
 その言葉で、ようやく理解したらしく、
 「いい先輩です」
 横目で私を見て、俯いていた。

 「貴重なご意見でした。頑張って下さいね。では、春風さん、また会いましょう」
 ニヤけた顔つきで、陽は部屋を出て行った。

 あの顔つき…
 田中君のことは、嫉妬しなかったんだね。
 私は、安堵のため息をついて、また人事部長と話を続けた。
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