どちらとの恋を選びますか?【後編】~元彼御曹司のとろ甘愛に溶かされて
 陽先輩は佇む私に歩み寄り、距離が近づく。
 冬月商事での顔つきとは違う。
 陽先輩の、切なく潤む瞳から、目が離せない。

 「先の事は、2人で決めたら良かった。手を離すんじゃ無かったって。再会した時、後悔の気持ちで心が苛まれたよ」

 そして、優しく私の手を握る。
 「だって、こんなに愛しているんだから」

 いつも私に触れて、ドキドキした陽先輩の手の温もり。
 陽先輩と別れたあの日から、毎日泣いていた。

 私の何がいけなかったの…

 どうして…何も言わずにいなくなったの…

 どうして、最後の夜に…忘れられないほどの愛を、私の体に刻んだの…

 どれだけ辛い思いで、日々を過ごしたか…
 でも…

 陽先輩の優しい声と頬笑みに、一緒に過ごした、あの頃に引き戻される。

 バイトの後に、一緒に笑いながら話をした帰り道。

 一緒に花火大会に行って、光と響く音に包まれた初めてのキス。

 夜景が見えるホテルで、初めて陽先輩に愛された夜。

 それから会う度に、私は陽先輩の愛で、大人になっていった。
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