どちらとの恋を選びますか?【後編】~元彼御曹司のとろ甘愛に溶かされて
 俺は社長室を飛び出し、焦る気持ちを抑えながら、咲羅に『今から帰る』とだけ、メッセージを送り、車を走らせた。

 家のドアを開けると、明るい部屋に、夕食の美味しそうな匂いがして、俺との約束通り、咲羅が食事の準備をしてくれていたと思うと、ホッとした。

 「ただいま」
 「お帰りなさい…」
 エプロンを付けた咲羅は、不安そうな顔をして出迎えてくれた。

 「そんな顔するなよ」
 「だって…」
 目を潤ませる咲羅を引き寄せ、抱きしめた。

 「全部片付いたから。見合いも無くなった。父さんにも認めてもらった」

 咲羅は驚いた顔で俺を見つめた後、口に手を当て声を殺して、大粒の涙を流していた。

 「約束のご飯、楽しみにしてたよ」
 咲羅は、しばらく話が出来ないほど、俺の腕の中で泣きじゃくり、お味噌汁の湯気が小さくなる頃、ようやく落ち着いた。

 「可愛い顔が台無しだぞ?」
 「…ごめんなさい。ホッとして…」
 「咲羅…今度の土日に、2人で出掛けないか?」
 「どこに…行くの?」
 「それは行ってからのお楽しみさ。さぁ、食べようか」

 咲羅…君は、どんな顔をするんだろう…

 ようやく、この時を迎える事が出来た。

 俺の夢を叶える時を…
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