どちらとの恋を選びますか?【後編】~同期は独占欲強めな溺甘御曹司でした
 このまま記憶が戻らないと…
 陽先輩はずっと、私を待っているかもしれない。

 「涼、陽先輩に会いたい」
 「俺も行くよ」
 「陽先輩に会わせていただけますか?」

 お母さんは、「お願いします」と小さくお辞儀をして、私達を陽先輩の病室に案内してくれた。

 病室に入ると、陽先輩は体を起こして座って、窓から外を見ていた。

 「陽先輩…」
 声を聞いて分かったのか、陽先輩は満面な笑顔で、振り向いた。

 「咲羅…待ってたよ」
 「体は痛くない?」
 「大丈夫だよ。咲羅、ごめん。事故にあったらしくて。約束も覚えてないんだ」
 「陽先輩…」
 「良かった。咲羅が来てくれて。そちらの方は?」

 涼の方を向いて、不思議そうな顔をしていた。
 涼のことも、覚えてないんだ…

 「あの…私の」
 「同僚の夏目と言います」
 「同僚?」

 咄嗟に、涼は陽先輩のことを思って、彼氏とは言わなかった。
 「春風、俺、外で待ってるよ」
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