どちらとの恋を選びますか?【後編】~同期は独占欲強めな溺甘御曹司でした
 もう私を見つめる目は、陽先輩じゃなく、冬月専務に変わっていた。

 「記憶が…戻ったんだね」
 「俺…記憶を…無くしてたのか?」
 「一時的なショックだって…」
 「思い出したよ。咲羅…全部…思い出した」

 初めて見た、陽先輩の流す涙…

 「咲羅…ごめん。迷惑を掛けていたんだね」
 「ううん…良かった。記憶が戻って」
 私は、ナースコールのボタンを押した。

 「私を…外で待ってる人がいるから」
 「彼…だね」
 「うん、じゃあ、帰るね」
 看護師さんと入替えに、私は振り向くこと無く、部屋を出た。

 陽先輩の記憶が戻った嬉しさと、私と別れていることを忘れ、愛し合っていることだけを覚えていた切なさが入り交じって、涙が溢れてきた。
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