結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
まだこの状況をよく理解できていない私。
そんな私を気遣ってくれたのか、父とフレッド王子が離れた途端に母がコソッと耳打ちしてきた。
「今日はごめんね、セアラ。もしものことを考えて、手紙にフレッド殿下のことは書けなくて」
「大丈夫よ。それより、なんで急にフレッド殿下が?」
「それが私たちにもわからないの。今朝、急に手紙が届いたのよ。近くに来る用事があるから、少しだけご挨拶させてほしいって」
「近くに来る用事? 挨拶?」
「そうなの。……あっ、それより早く行かないと。2人を待たせてしまうわ」
母に背中を押されて、父とフレッド王子の待つ部屋へ足早に向かう。
その間も、私の頭の中は疑問でいっぱいだった。
たしかに私たちはまだ挨拶すらしていなかったけど、どうして急に?
お姉様が結婚してもう10年経つのに……。
もし結婚式を欠席したことで改めて挨拶を……と考えたとしても、10年後に来るのは不自然だ。
しかも当日の朝に突然連絡してきたことにも違和感がある。
どうしても今日来なくてはいけない理由でもあったのかしら……?