結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
一度言い出したら聞かないことをわかっている両親は、従者を私に付き添わせてお願いをきいてくれた。
「わあ……! 中も素敵ね!」
目を輝かせてそう叫んだ私を、従者が首を傾げながら不思議そうに見つめてくる。
無理もないだろう。
その古い教会は穴のあいた壁や屋根から陽の光が差し込んでいて、割れた木の椅子や破れた絵画が並んだ異様な空間だったのだから。
なんて神秘的な場所なの! 素敵!!
「セアラ様、足元にお気をつけください」
「わかってるわ」
扉付近に立っている従者に応えながら、中にゆっくり進んでいく。
ギシギシと音を立てる床も埃の積もった汚れた椅子も、私にとってはめずらしくておもしろい。
こんなに汚れた場所、今まで入ったことがないわ。
まるで本の中の冒険者にでもなった気分……!
「ん?」
そのとき、長椅子の間に男の子が体勢を低くしているのが目に入った。
入口から見られないように隠れていたのだろうけど、真横を歩いている私からは丸見えだ。