結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「俺がここにいることは誰にも言うな!」
「…………」
「わかったな」
ボロボロの椅子の上で体を丸めて隠れているというのに、やけに偉そうな態度だ。
そのチグハグな姿がおもしろくて、私はコクッと素直に頷いた。
変な子……!
それが私と男の子の出会いだった。
毎週末、家族で教会に行くたびに私は古い教会に……あの男の子に会いに行った。
従者には扉の外で待っててもらい、誰にも内緒で2人だけで1時間ほどおしゃべりしたりお菓子を食べたりした。
どこの誰かも、名前も、ちゃんとした顔すら知らない男の子。
なぜかそれがおもしろくて、私も本当の名前は教えなかった。