結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
はぁ……。朝からついてないわ。
ただほんの少しぶつかっただけなのに……。
「もう! どちらかと言ったら私のほうが被害者なのに! 殿下なんて全くの無傷じゃない!」
「そうだったのか」
「!?」
誰もいない廊下で、こっそりと叫んだつもりだった。まさか背後に人がいたなんて。
私は血の気が引くのを感じながら、恐る恐る振り返った。
この声は……。
予想通り、ジョシュア殿下が薄ら笑いを浮かべて立っている。
「俺が加害者で、セアラが被害者だったんだね」
「で……殿下。あの、今のは……」
この麗しい王子の登場に、こんなにも恐怖で怯える女性はきっと私くらいなものだろう。