結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「そうですね。お兄さんとは違って、あまり笑顔のない方でした。でも……思ったよりも話しやすくて、優しい方でした。それに……」
知っている人に似ている。
そう言おうとして、言葉を止めた。
……私の初恋の男の子に似てるだなんて、そこまで話す必要はないわよね?
「それに……なんだ?」
「い、いえ。なんでもないです」
「なんでもなくはなさそうだが? 言え」
笑顔のまま低い声で命令されて、思わず「ひっ」と声が漏れる。
「ほ……本当になんでもないですからっ!! 私、この確認してもらった決裁書を提出してきますっ!!」
「あっ……!」
ジョシュア殿下に呼び止められる前にと、返事も聞かずに執務室を飛び出した。
手に決算書を持っていてよかったと思いながら、足早に廊下を進んでいく。
ああ……戻ったときのために、いろいろと言い訳を考えておかなくちゃ。
また違う罰を与えられることを覚悟して、私は大きなため息をついた。