結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「セアラ秘書官」
決算書を提出し、腹黒悪魔の待つ執務室への廊下をトボトボ歩いていると、急に背後から声をかけられた。
その明るく可愛らしい声で、振り向く前にメイドのドロシーだとわかる。
「あっ。ドロシー」
マーガレット王女の専属メイドとして働いているドロシーは、今日もニコニコしていてご機嫌だ。
「なんだかお久しぶりですね」
「そうね。マーガレット殿下はお変わりないかしら?」
最後に会ったときの王女の様子が気になり、深い意味に捉えられないように軽く尋ねてみる。
王女は私が殿下の妃候補決め担当をしていることが不満らしく、その事実を知ってショックを受けているようだった。
「ええ。……と言いたいところですが、実はそうでもないんですよね」
「えっ?」