結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「……は、はい。男とか関係なく、私にとって殿下は殿下ですので」
「ふーーん。なるほどね」
殿下はハッと吐き捨てるように笑うと、腕を組んでニヤリと嫌味な笑みを浮かべた。
「セアラは俺を男として見てなかったのか……そうか」
「……殿下?」
ジョシュア殿下はフゥーーッと息を吐き出しながら、ゆっくりと私に近づいてきた。
防衛本能が働いたのか、私の足は逃げるように後退りを始める。
スタ……スタ……スタ……
ズリ……ズリ……ズリ……
うすら笑いを浮かべて真っ直ぐに私に向かって歩いてくるジョシュア殿下と、足を引きずるようにして殿下から距離を取る私。
どちらも声を出さない静かな空間に、足音だけが響いている。