結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「……殿下。前から思っていましたが、女性にそんな冗談を何度も言うのはよくありませんわ」
「冗談じゃないけど」
「じゃあ悪ふざ──」
そこまで言ったとき、ジョシュア殿下の顔が近づいてきた。
すぐ目の前に立っているとはいえ、背が高い殿下と私は少し距離があった。
しかし、今は触れてしまいそうなほど近くに殿下の顔がある。
王家特有の美しい黄金の瞳で、真っ直ぐに私を見つめるジョシュア殿下の顔が。
「悪ふざけでも冗談でもない。本当に俺はセアラが好きなんだ」
「…………」
作られたような微笑みも嫌味っぽい笑みもない、真剣な表情のジョシュア殿下。
殿下…………本当にどうしちゃったの?
今までの嫌がらせとは違う。
いったい何を企んでいるの? そんなに妃候補を決めたくないの?