結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
……ふっ。あの頃は若かったわね。
ジョシュア殿下が意地悪な腹黒王子だなんて知らずに、単純に憧れていたんだもの。
急に秘書官を目指すことになって正直驚いたけど、あの王子様の近くで働けるならとがんばって勉強に励んだわ。
あれから11年……あっという間ね。
純粋だった頃の幼い自分を鼻で笑うと、私は食べ終わったプレートを手に持ち椅子から立ち上がった。
「ではお先に失礼するわね」
「ええ。セアラ秘書官、またあとで」
優雅に笑顔を振りまきながらその場を去ったけれど、これから私には痛いと噂の薬を鼻に塗られるという行為が待ち受けている。
こんな暴挙が許されていいのかしら。
あの腹黒王子を何度も訴えてやりたいと思いながらも、力のない私は言うことを聞くしかなかった。