結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
手……! 手が!! 大きいわっ!
お、男の人の手が私の額に……!!
すぐに王子から目をそらしたものの、その後の視点が定まらずに泳いでしまう。
動揺していると気づかれたくないのに、どうしても普通にできない。
ああ、もうっ。
これだからジョシュア殿下に男性慣れしていないってバカにされちゃうのよ。
「セアラ?」
「あっ、はい! もう大丈夫です!」
「そうか」
少しだけフレッド王子の表情が緩み、額から手が離れた。
え……笑った?
あのフレッド殿下が!
ほんの少しだけ口角が上がっただけだというのに、そのめずらしさに驚いてしまう。
普段無表情の人の笑顔って、こんなにも衝撃を与えるものなのね。
このギャップで恋に落ちてしまうご令嬢も多そうだわ……って、そんなことよりも!
「あの、面会をお断りしてしまって申し訳ございませんでした。私に会いたかったとのことでしたが、姉のことで何かお話でもあったのですか?」
「いや。用件はないと言っただろ。セアラに会いにきただけだ」
「…………」
「俺はもうすぐ国に帰る。だから、この国にいる間にできるだけ会っておきたかった」
「なぜ私に?」
「セアラに一目惚れをしたから」
「…………はい?」