結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 自分に言い聞かせるように心の中で叫ぶと、私は立ち上がってドレッサーに向かった。
 引き出しの奥にしまってある小さな箱を取り出し、蓋を開ける。


「わ……懐かしい」


 箱の中に入っているのは、思い出の男の子がくれた(と思う)紫色の宝石がついたブローチだ。



 これを見ると、あの頃を思い出すなぁ……。



 私の初恋であり、唯一の恋。
 いつも長い前髪で隠れていてちゃんとした顔も知らないし、名前も知らない。
 知っているのは、口が悪いことと素直じゃないことと意外と寂しがり屋だってことくらいだ。



 ……ジョシュア殿下にいじめられなくて少し物足りなさを感じてるし、私って実はどこか変なのかしら?



 幼い頃は優しい貴族の少年と遊んだりもしたけど、誰のことも好きになったりはしなかった。

 口の悪い得体の知れない男の子を好きになったり、殿下の嫌がらせを受け入れていたり、実は私は変な趣味があるのかもしれない。

< 226 / 318 >

この作品をシェア

pagetop