結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
無理やり頭の中で想像してみる。
思い出の男の子に似た無表情なフレッド王子が、結婚してほしいと私に伝えてくるイメージを──。
「んん――……わからないわ」
正直にそう答えると、ドロシーは意外そうに目を丸くした。
「受けないのですか? 他に好きなお相手でもいるんですか?」
「好きな相手!? そ、そんなのいないわ」
「なら、どうしてですか? こんなに素敵なお相手なのに、断る可能性があるだなんて」
「…………」
言われてみればそうだわ。
私は婚約者を見つけたくて秘書官を辞めようとしているのに、どうしてフレッド殿下の求婚をすぐに受けるって考えなかったのかしら。
フレッド王子のことが嫌なわけではない。
もし本当に婚約できるのなら、とても申し分のないお相手だと思う。
それなのに……。
「あっ、セアラ秘書官!」
そのとき、よく会議室の準備などを手伝ってくれるメイドたち3人が小走りにこちらのテーブルにやってきた。
朝食プレートを持っていないため、今食堂に来たばかりなのだろう。
みんなドロシーのように目をキラキラと輝かせている。