結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 望んでいた方向に進んでいるというのに、なぜか気分が晴れない。
 あんなに決めてほしいと思っていた妃候補についても、殿下に確認したくないと思ってしまっている。



 どうしたのよ、私。
 早くこの候補者の書類を殿下に見てもらわなくちゃいけないのに……。



「セアラ秘書官?」

「!」


 私が書類を見たまま動かなくなったため、どうしたのかと思われてしまったようだ。
 トユン事務官が心配そうに私の名前を呼んだ。


「あ、えっと……殿下の今の仕事がひと段落したら、確認してもらいますね」

「わかりました」



 ……つい先延ばしにしちゃったわ。



 ジョシュア殿下は自分の仕事に集中しているのか、こちらを見ることもなくペンを動かし続けている。
 私は書類を自分の机の端に置き、今やっている仕事を再開した。

< 239 / 318 >

この作品をシェア

pagetop