結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「……怖いか?」
 
「い、いえ。まさか」
 
「ふっ。強がっているな」


 
 ……わかっているなら聞かないでほしいわ。


 
 私の反応をいちいち確認しては、楽しそうに笑うジョシュア殿下。



 ほんっとうに意地悪だわ! この悪魔!


 
 どうせ塗られるのなら、早く済ませてもらいたい。
 私は覚悟を決めて、ジョシュア殿下が塗りやすいようにクイッと顔の角度を上げて目をつぶった。

 
「よろしくお願いいたします」
 
「!」

 
 殿下のお楽しみタイム。
 すぐにでも痛いと噂の薬をたっぷり塗られると思ったけれど、殿下は一向に動こうとしない。
 見えなくても、殿下が動いていないのは気配でわかった。


 
 ……ん? まだ?



 焦らして遊んでいるのかとも思ったけど、なんとなく重い空気を感じる。

 
「あの、殿下。まだでしょう……か……。……!?」

 
 薄目を開けてみると、つい先ほどまでご機嫌な様子で座っていたジョシュア殿下の顔がひどく不快そうに歪められていた。
 とても国民にはお見せできないような悪人面だ。
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