結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「セアラ。この予算案の資料はあるか?」
「はい。すぐにお持ちしますね」
「ああ」
執務室の本棚の中から該当する資料を探し出し、ジョシュア殿下の机に置く。
すでに見終わったと思われる資料を棚に戻し、殿下の机の上を小まめに整理するのも私の仕事だ。
今日はジョシュア殿下もずっと机に張りついてるから、明日の分の仕事にまで手を出し始めているわね。
仕事に余裕のある今こそ、妃候補の書類を確認してもらうチャンスだ。
そうわかっているのに、どうしてもその提案をすることができない。
……ダメだわ!!
どうして言えないのかしら!?
つい最近までは、強気な態度で「候補者を決めてください!」と言っていたというのに。
今ではその書類を差し出すことすらできなくなっている。
あんなに殿下に決めてほしいと願っていたのに、今では心のどこかで決まらないでほしいと思っている自分がいる。
それはどうしてなのか──その理由はあまり考えたくない。