結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 結局、この日私は妃候補の書類を殿下に渡すことができなかった。


「すみません。トユン事務官。少し確認したいことがありまして。明日こそは殿下に決めていただきますので」

「まだ期日まで数日あるから大丈夫ですよ。では、お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」


 ジョシュア殿下もトユン事務官もいなくなった執務室で、ふぅ……と小さくため息をつく。
 全員がこんなに早く仕事を終えたのは久しぶりだ。



 よし! 私も実家に行かなくちゃ。



 自分の机の上を整理して執務室を出ようとしたタイミングで、ジョシュア殿下が戻ってきた。
 ニヤニヤとした笑みもなく、どこか暗い顔をしている。


「ジョシュア殿下。何か忘れ物ですか?」

「いや。セアラに確認したいことがあって戻ってきた。……今夜、実家に帰るのか?」


 不安を感じているような小さな声で、ジョシュア殿下が尋ねてきた。
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