結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

「中に入りますか?」

「いや、いい。帰る前に挨拶に寄っただけだ」

「では……あちらのガゼボに移動しましょう。月の光とお屋敷からの明かりで、そこまで暗くないんです」


 説明すると、フレッド王子はコクッと頷いて私のあとについてきた。
 ガゼボに置いてある白い椅子に座り、自然と2人で丸い月を見上げる。


「夜にこの場所で月を見るのが昔から好きだったんです。綺麗ですよね?」

「ああ」


 無表情なフレッド王子が本当に月を綺麗と感じているのかはわからないけれど、なんとなくこの方はウソをつかないのではないかという確信がある。


「あの、先日は急に戻ってしまってすみませんでした」



 とりあえず、この前のジョシュア殿下とのことを謝っておかないとね。



 フレッド王子は月から視線を外し、横目で私をチラリと見た。
 この場所は屋敷の外からは見えない場所だからか、黒髪のウイッグも外している。


「いや。気にしなくていい。……ジョシュア殿下とは前に一度挨拶をしたことがあるが、この前はだいぶイメージが違っていたな」

「イメージですか?」

「ああ。前に会ったときはもっと穏やかな方かと思ったが、意外と独占欲の強い方のようだ」

「!」



 ジョシュア殿下の本性にうっすら気づいてる……?


< 249 / 318 >

この作品をシェア

pagetop