結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
ギョッと目を丸くした私と違って、フレッド王子はあいかわらず無表情のままだ。
頬を染めることもなく、のんびりと月を見上げている。
「当たってるというのは……」
「俺がセアラに興味を持ったことが」
「それって、木登りをしてドレスを泥だらけにしてる女の子がめずらしかっただけですよね?」
「それがきっかけなのは間違いないけど、会って改めて思ったってこと」
会って改めて思った??
実際に会ってみて、本当に一目惚れしたってこと?
……そんなことないわよね。
月から私に視線を戻したフレッド王子が、悩んだ顔の私を見てまたクスッと笑う。
「そういうところ」
「え?」
「俺、顔がいつも怒ってるみたいだって言われて、女性と2人きりになっても怖がられたり異常に気を使われたりすることが多かった。会話もまともにできなかったし。それが嫌で、婚約者を作れと言われてもずっと断ってたんだ」
「…………」