結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

「……前が見えない」

「ええ。こちらからも殿下の目が見えません。王家特有の瞳の色が見えてしまっては、正体がバレてしまいますので」

「これを被っていたら、俺だとわからないのか?」

「はい。まったくわかりません」



 ……ということは、無理に笑顔を作ったり丁寧な喋り方をしなくてもいいということか?



 俺の気持ちを見抜いたのか、オリバーがそれに答えるかのように頷く。


「このお姿なら、ジョシュア殿下の思うままに行動していいのですよ」

「!」


 なんとも魅力的な提案だったが、それでも大勢の人がいる街に出るのは躊躇われた。



 もし、ウイッグが取れて俺がジョシュアであると気づかれたら……。
 病気であるというウソも、今までの俺の演技も、全部バレてしまう。


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