結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「……やっぱり、やめ──」
「教会はどうですか?」
「……教会?」
「はい。今、新しい教会を建てている場所があるんです。その隣に、壊す予定の古い教会があるのですが、そこなら誰も来ないでしょう」
部屋に閉じこもっている俺をなんとか外に出したいのか、俺が断った場合にそこまで考えていたのかと驚いてしまう。
まあ、誰も来ない場所なら……。
「行ってみる」
「かしこまりました。では、あまり高位貴族っぽくない服に着替えましょう」
俺はオリバーに用意された服に着替え、使用人などに見つからないよう箱の中に隠れてこっそりと王宮を抜け出した。
わざと汚れた馬車に乗り、その古い教会を目指す。
久々に外に出たな……。
馬車に乗る際浴びた、清々しい外の風がとても心地よかった。
前に座っているオリバーが、静かに俺を見守っている。
執事服から平民の服に着替えたオリバーとなら、並んでいても王子だとは気づかれないだろう。