結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

「…………ブローチ」

「はい」

「あのブローチを、教会に持っていくことはできるか?」

「……殿下は行けませんが、私だけなら行けます。いつもお二人が座っているあの椅子に、置いておきましょう」

「頼んだ」


 机の上に置いてあったブローチをオリバーに手渡し、俺はベッドに向かった。


「手紙などはよろしいのですか?」

「……ああ」


 どうせ、俺の正体を打ち明けることはできないのだから意味がない。


「左様ですか。……では、すぐに行って参ります」

「…………」


 オリバーが出ていき、部屋がシーーンと静まり返る。
 まるで俺の心の中のようだ。



 本当にもう会えないのか……?
 あの女の子はいったい誰だったんだ? 名前くらい、聞いておけばよかった。


< 269 / 318 >

この作品をシェア

pagetop