結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「…………ブローチ」
「はい」
「あのブローチを、教会に持っていくことはできるか?」
「……殿下は行けませんが、私だけなら行けます。いつもお二人が座っているあの椅子に、置いておきましょう」
「頼んだ」
机の上に置いてあったブローチをオリバーに手渡し、俺はベッドに向かった。
「手紙などはよろしいのですか?」
「……ああ」
どうせ、俺の正体を打ち明けることはできないのだから意味がない。
「左様ですか。……では、すぐに行って参ります」
「…………」
オリバーが出ていき、部屋がシーーンと静まり返る。
まるで俺の心の中のようだ。
本当にもう会えないのか……?
あの女の子はいったい誰だったんだ? 名前くらい、聞いておけばよかった。