結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 突然笑顔の消えた俺を見て不安になったのか、バークリー夫人が心配そうに俺の名前を呼んだ。


「ジョシュア殿下? どうかされましたか?」

「あっ……いえ。あの、あちらにいるお嬢さんはアイリス嬢の妹さんでしょうか?」

「え? あら。セアラったら」


 バークリー夫人が振り返ると、少女は慌てて顔を隠していた。
 クスクス笑いながらアイリス嬢が母親の代わりに答えてくれる。


「はい。妹のセアラです」

「そうですか」



 ……セアラ。それがあの子の名前か。



 そのあとは、アイリス嬢たちとどんな会話をしたのか覚えていない。
 俺の頭の中はセアラのことでいっぱいになっていて、適当に話を合わせていた気がする。

 そう。このとき、俺の頭の中では『どうやってセアラを俺の秘書官にするか』という考えでいっぱいだったのだ。


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