結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 セアラが古い教会で会った女の子だということを、俺はオリバーには話していない。
 
 俺が秘書官を別の人に……と言ったのだって『アイリス嬢を気に入らなかったのか?』と思っても不思議ではないのに、なぜか『セアラ嬢を代わりに』という意図で動いてくれていた気がする。



 まあ、どうでもいいか。
 セアラが俺の秘書官になるのであれば、他の細かいことは気にしない。


 
「あ。殿下。セアラ嬢の入学する学園ですが、アイリス嬢と同じでよろしいでしょうか?」


 ピクッ

 オリバーの質問に、俺は瞬時に反応する。
 ついさっき他の細かいことは気にしないと自分で思ったばかりだというのに、前言撤回だ。


「そこはたしか共学だったな?」

「はい」

「却下だ。女学園を指定しろ」

「かしこまりました」


 オリバーがスラスラと書類に書き込んでいく。
 ついでに……と、俺は他の要求も一緒に伝えた。


「それから、アイリス嬢と同じようにセアラ嬢にも急に断られたら困るからな。セアラ嬢にはしばらく婚約者は作らせないよう、バークリー家に伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

「あと……これはまだ先の話だが、実際に秘書官として働く際に華やかな服など着られても困るからな。目立ちにくい、地味な秘書官用の制服をデザインしておいてくれ」

「かしこまりました」


 俺のどうでもいいような要求にも、反対することもなく素直に受け入れるオリバー。
 深く追及してこないところも助かる。



 あと6年か……。



 こうして、俺は見事にセアラと一緒に働ける環境を整えた。

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