結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「執事が辞めて、事務官1人で大変だったんだ。今後はセアラにもたくさん仕事を振るからね。がんばってついてきて」
「セ、アラ……?」
「ああ。それから、大事なことを伝えないとね。『俺の言うことは絶対』だから。どんな要望も叶えて、俺の言ったことはすぐに実行する。わかった?」
「え……え……?」
表情はそのままなので、笑顔で穏やかな口調とそのセリフのギャップに驚いている様子だ。
聞き間違い? とでも言いたげな丸い目が、俺をジッと見ている。
……可愛いな。
吹き出しそうになるのをこらえて、俺は声を低くして少し圧を加えた。
「……わかったか? って聞いてるんだが」
「!! は……はいっ」
セアラの頬に浮かんでいた赤みは完全に消えて、今では真っ青になっている。
半泣き状態のセアラを見て、俺は満足してニヤッと笑った。
セアラの前では無理に笑わなくていいと思っていたのに、嬉しさが顔に出て自然に笑顔になってしまう。
だが、これも本当の俺の姿なのだから問題はないだろう。
地獄に来てしまったとでもいうような表情をしているセアラと違い、俺はウキウキと高鳴る気持ちでいっぱいだった。