結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜
「はい。その人が好きなので、フレッド殿下の求婚はお断りしました」
「…………」
ジョシュア殿下は喜んでいいのかよくわからない様子で、困惑の表情をしている。
いつも余裕ありそうに笑っている殿下が、こんな表情をするのはめずらしい。
「……セアラにそんな相手がいるなんて、聞いたことないけど」
「今まで誰にも話していませんでしたから」
「なんで今になって? その男と会ったのか?」
「はい。毎日会っていました」
「!?」
不可解そうに、殿下が眉をくねらせた。
自分の知っている情報と私の言葉が一致しなさすぎて、軽いパニックになっているように見える。
平然を装っているけれど、私だって実は心臓がバクバクと激しくて息が苦しい。
……言わなくちゃ。
「……このブローチをくれた人。それが、私の好きな人です」
「…………え?」
襟についたブローチに触れながら、ニコッと笑顔を作る。
声が少し震えていたことに、殿下は気づいていなそうだ。口をポカンと開けたまま固まっている。