結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 私はグイッとジョシュア殿下を両手で押し返し、勢いよく頭を下げた。


「長年気がつかず、申し訳ございませんでした!」

「やだな。なんで謝ってるの? 俺は全然怒ってないのに。仕方ないよって言ってるだろ?」

「で、でも……」


 ニコッと爽やかな笑みを浮かべたジョシュア殿下は、完全にいつもの意地悪な殿下だ。
 この顔で言うことはほぼウソであり、すべて遠回しな嫌味であることを私は知っている。



 さっきまでの優しい殿下はどこに……!?



 怯えた私を見て、ジョシュア殿下がニヤリと笑った。


「まあ。セアラが申し訳ないなって思ってるなら、それなりに罰が必要かな?」

「罰……ですか?」

「うん。『ジョシュア殿下が大好きです』って100回言ったら許してあげるよ」

「…………」

「さあ。どうぞ」


 ジョシュア殿下は自分のサラサラの銀髪を耳にかける仕草をして、耳に手を添えている。
 聞く準備万端とでも言いたげなその態度に、私の目は軽蔑するように細められた。



 ……それを言わせるために、わざとあんなに責めてきたのね。


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